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本多歯科ブログ

【更新】写真で見るインプラント治療

2020年04月1日(水)

実際の症例を写真で見るからわかりやすい

このブログは、枚方市・交野市・北河内地域のインプラントを考えている患者さんが、安心して欠損補綴治療やインプラント治療、治療計画立案が受けられるようにと、当院の患者様のご協力・ご了承のもと作成しています。プライバシーの観点から症例写真やブログ内容などを許可なく転載や引用することは禁止とさせていただきます。なお診断や治療計画、リスクやデメリットについては個人差があります。このブログで紹介している症例紹介や内容はあくまで参考例としてご覧ください。またブログでの内容には個人的な見解も含みます。ご了承ください。

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歯が抜けたらどうなるの?インプラントで元通りになるの?

インプラントは第二の永久歯と言われていますが、その全てが天然歯と同じようになるわけではありません。人工歯の部分はセラミックを用いて天然歯のような見た目を得ることはできますが、歯周組織との関係や構造上からの観点は天然歯と比較すると大きく異なります。
歯を抜いてインプラントをする際に歯科医師側が考えないといけない問題のひとつ、それは『歯周組織の変化、特に歯槽骨の骨吸収』です。歯槽骨の骨吸収とは歯がなくなることによって歯を支えている歯槽骨が失くなってしまうことです。それにより歯肉の形態が変化し、インプラント治療に影響を与えます。

Case 【外傷性前歯脱臼 / 歯槽骨骨吸収】

上記症例は30歳男性、3日前に事故によって前歯を殴打して、その際に左上前歯が抜けてしまった(外傷性脱臼)症例です。歯が歯周組織から抜去してしまってから3日目ということだったのですが、すでに頬側の歯槽骨骨吸収(歯を支えている骨がなくなっていくこと)が始まっており、頬側歯肉が陥没してしまっていることがわかります。インプラントをする際に人工骨補填材を用いてインプラントを行いましたが、歯槽骨を元に戻すことは至難の技です。


インプラントは手術時期によって区別

インプラント手術には埋入する時期によって抜歯待時インプラントと抜歯即時インプラントに分別されます。抜歯待時インプラントではある程度骨吸収を待ってインプラント手術を行います。また抜歯即時インプラントでは抜歯をしてすぐに抜歯窩にドリリング(インプラントを入れる穴を形成すること)をしてインプラントを行うため、1回の外科処置で済む可能性と治療期間が短縮できる可能性が高いことがメリットです。どちらにしても抜歯をすると歯周組織の変化や歯槽骨の骨吸収が起きるため、我々インプラントを治療に取り入れている歯科医師は、真摯に向き合って治療しています。

Case 【抜歯即時インプラント / 上顎前歯】

抜歯後すぐに抜歯窩にドリリング(インプラントを入れる穴を形成)をしてインプラント手術を行う抜歯即時埋入。早ければ抜歯をしてから約2〜3ヶ月で上部構造(インプラントの人工歯の部分)が装着できます。前歯部のような審美症例の場合でも、ある一定の条件下では抜歯待時より抜歯即時の方が審美的に良好な結果が出やすいという報告もあります。歯周組織への感染が低い歯根破折(しこんはせつ:歯根が割れること)や難治性根尖性歯周炎(歯根に膿がたまる病気)で抜歯となった症例に向いています。
上記症例は30歳女性、上顎左側切歯の根管治療を3年に渡り治療しているが瘻孔(膿の出口)が消失せず、歯に違和感と咬合痛が続いているという主訴で来院されました。抜歯となった場合の審美面での不安が大きくあった様子でした。当院でも根管治療を施しましたが、歯内の状態が悪く予後が不良と判断したため抜歯即時インプラントを計画。抜歯後にインプラント埋入する際に人工骨(骨補填材)を填入して、骨吸収の抑制を図っていますが、多少の骨吸収はしてしまっています。切歯の大きさ(幅)が左右で若干の差がありましたが、歯の形態を工夫することで歯肉とも良好な審美を獲得しました。術後2年でも経過良好です。

治療費用:インプラント+上部構造34万円 / ホワイトニング1万円×2回
治療期間:約5ヶ月
歯根に膿がたまる病気


歯を抜くと歯周組織に変化が起きる

歯を抜くとそれまで歯を支えていた歯の歯根の周りにある歯槽骨がなくなって(吸収して)しまい、歯周組織の形態にも変化が及びます。単独歯の欠損よりも連続した多数歯欠損の方が骨の吸収量(失くなる量)は大きくなりやすいです。歯が抜けたその日から歯槽骨の吸収が始まるため、抜歯即時インプラント(歯を抜いた日にインプラントを埋入する方法)ではその歯のまわりの骨がどれくらい吸収するかを予測してインプラントを埋入する必要があります。骨吸収を予測せずに歯が生えていた位置にインプラントを入れてしまうと、3〜6ヶ月後に骨が吸収してインプラントのネジの部分が露出したり、審美性を損なう可能性があります。また前歯部の場合は歯槽骨が吸収することで口唇の形態が変化し、顔貌の審美にも影響を及ぼすこともあり、慎重な診断が必要です。口唇の形態を温存するためには前歯部の歯槽骨をどう保存するかがキーポイントになります。

Case 【上顎総義歯 / 残根上義歯】

上記症例は義歯作製を希望して来院された60歳男性です。十数年前に抜歯したという部位の歯槽骨の骨吸収がかなり進行しています。抜歯と判断された部位については抜歯、残せそうなところは残根(歯冠部分を除去した状態)として保存いたしました。特に口唇と顎骨の形態を温存するために前歯2本と右上小臼歯は根管治療の後、将来性を考慮して残根として保存しました。抜歯後にはさらに骨吸収が進行し、歯肉も減少しているのがわかります。ここまで吸収してしまうとインプラントでの固定式のブリッジは困難ですので、必然的に入れ歯となります。入れ歯の場合、歯の配列の自由度が高いため審美的には良好な結果が獲得しやすいです。残った歯にマグネットを装着したり、インプラントオーバーデンチャー(インプラントで入れ歯を留める方法)という方法などで機能性を高めることもできます。薄くて心地よい金属床義歯やチタン床義歯もオススメです。(症例は保険の入れ歯)
治療費用:保険の入れ歯 保険適応 / 金属床義歯25万円 / チタン床義歯35万円 / マグネットアタッチメント6万円 / インプラントオーバーデンチャー上顎65万円〜125万円・下顎45万円〜75万円


インプラントはあくまで“異物”であることを忘れてはいけない

インプラントとはそのほとんどが生体親和性が高いチタン製品で、精密につくられた人工歯根を顎骨に埋入して、その人工歯根を使って差し歯をするというものです。ただしインプラントはあくまで口腔内にとっては異物です。天然歯とは構造が大きく異なります。その異物を使って、いかに天然歯を守るか、いかに咬合や顎関節を守るか、いかに審美を守るかが重要なキーポイントになります。そのためには歯が抜けてしまった原因をしっかりと考え、口腔内に存在するリスクをしっかりと見極め、それを改善する必要があります。また歯槽骨の吸収の予測やインプラントの位置や深さの判断、歯の形態、メインテナンスのし易さなど様々なことが重要となります。

Case 【抜歯待時インプラント / 矯正治療】

上記症例は50歳女性、主訴は右下臼歯部のインレー(詰め物)が何度装着してもすぐに取れてしまうということで来院(初診時の写真は応急処置としてセメント充填を行なっています)されました。左下第一大臼歯は数年前に歯牙破折のため抜歯したとのこと。前歯の歯並びや噛み合わせ不良(叢生)によって前歯(特に左右犬歯)が機能しておらず、臼歯部(奥歯)でその役割を行わないといけなくなり、臼歯部に無理な咬合力がかかっていることが原因と診断しました。これが解決されないと臼歯部に何を入れても再度外れたり壊れたりする可能性やリスクがあるため、前歯を機能させることで臼歯に対する無理な咬合力を低減することを目標に治療を行うことにしました。

前歯部の位置異常を解決するために矯正治療を行い、臼歯部には前歯の機能性に合わせた形態のセラミック修復(詰め物)を装着、左下欠損部にはインプラントを用いて補綴修復を行いました。骨格的に前歯のかみ合わせの関係が浅く、臼歯の咬合負担を軽減することが困難な症例でしたが、臼歯部の形態を工夫して製作しました。術後1年、「こんなに長い間(修復物が)外れなかったのは嬉しい」とのこと。これからもメインテナンスを頑張って、できるだけ長持ちさせていきましょう!

治療費用:インプラント+上部構造34万円 / 臼歯セラミック修復6〜8万円 / 矯正治療60万円
治療期間:約18ヶ月


インプラントはメインテナンスが大変?

当院でインプラント治療を勧める際に多い質問が「インプラントはメインテナンスが大変?」とよく聞かれます。確かに抜歯をしてインプラントを行うと歯周組織の変化が起こり、インプラント周辺のブラッシングは難しくはなると思います。ただ上部構造(インプラントの人工義歯の部分)の作製時にはメインテナンスがしやすい形態を意識して作製しています。特別な磨き方をしないと磨けないということではありません。天然歯を極力守るということから、天然歯と同じように歯磨きやセルフケアを頑張ってもらいたいです。歯間ブラシやフロスなど口腔清掃補助器具を使用すればもっと磨けると思います。最近ではウォーターピックなどでインプラントを清掃する方法を推奨する歯科医師も増えています。
インプラントを行う目的としては、欠損した歯の再現や機能性向上だけではなく、インプラント治療をすることで残っている天然歯や顎関節を守ることです。例えば、1回でも虫歯になった人は再発を防止するために必要なメインテナンスや間食習慣の改善を今まで以上に頑張らなくてはいけません。虫歯や歯周病などで歯を抜かなくてはならなくなった方は尚更だと思います。残っている歯を大切にするためのメインテナンスのついでにインプラントのメインテナンスを行なっていただけたら…と思っています。確かにインプラントは高額診療ですが、天然歯はプライスレスです。治療終了時の状態が少しでも長く続くようにセルフケア指導とプロフェッショナルケアの両方からお手伝いさせていただきます。
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Case 【抜歯待時インプラント / 上顎臼歯部】

抜歯待時インプラントとは、その名の通り「抜歯をして時間を待ってインプラント手術をする」方法です。この方法では抜歯をしてから最低でも約3〜6ヶ月間以上の時間をおいてインプラントをするので、ある程度歯槽骨の骨吸収が終わっており、骨吸収量(歯槽骨が失くなる範囲)の見極めが容易となります。歯槽骨の吸収を予測する必要もなく粘膜も回復しているため、比較的インプラント治療も簡単にできます。(上顎洞や神経が関わる場合は困難な症例となる場合もあります)根尖病巣の大きな歯や歯槽骨の吸収が予測しにくい複数歯に渡る抜歯症例に向いています。
上記症例は60歳女性、15年程前に装着した左上のブリッジをインプラントに変更した症例です。抜歯をしてかなりの時間が経過しているため、主に頬側の歯槽骨が吸収しているのがわかります。インプラントを埋入する位置は舌側の骨が残っている位置に、深さは最終の歯肉縁ライン(最終的な補綴物の歯茎のライン)を想定して埋入しました。

補綴物(上部構造の人工歯部分)の形態を工夫して、想定していた歯肉縁ラインに合わせて歯茎の高さを揃えることで、術後のブラッシングやメインテナンスをしやすく、審美的にも影響が出ないように配慮しました。また反対側の欠損部にもインプラント治療を行い、左右での咀嚼を可能としました。下顎前歯部の矯正治療を行い、前歯部の噛み合わせを改善、全顎的に金属を使用しないメタルフリー治療もしていただき健康面でも向上しました。ブリッジからインプラントに変わり、歯並びが綺麗になったおかげで、「術前よりも歯磨きが好きになって長い間磨いてます」とのことでした。
治療費用:インプラント+上部構造34万円 / 臼歯セラミック修復6〜8万円 / 下顎部分矯正25万円
治療期間:約15ヶ月


インプラントのリスクとデメリットを知ろう!

インプラントを行う上で、インプラント治療のリスクやデメリットについて理解する必要があります。まずは冒頭でも述べたように、インプラントはチタン製、上部構造はセラミックと生体親和性(身体にとって優しい)が高い材料だと言っても、生体にとってはあくまで“異物”です。その異物を使って、天然歯や顎関節を守り、インプラントを機能させることで口腔内にとってのメリットがデメリットを超えているかが重要なキーポイントとなります。口腔内のリスクとしては歯が抜けてしまった原因はどこにあるのか、今後の口腔内のリスク(口腔内の機能性や他の歯への影響など)はどれくらいあるのかということが関わり、担当医の診断など大きく個人差があります。

またインプラント手術を行うにあたっては、全身疾患が大きく関わります。高血圧や糖尿病などはコントロールがされていない場合、手術部位への感染や治癒遅延を招きます。喫煙習慣は歯肉の毛細血管を収縮し、栄養不良から治癒不全を起こす可能性が高くなります。外科処置が必要となることから骨粗鬆症や骨肉腫、癌などでビスフォスフォネート製剤を服用している場合は腐骨を生じやすく、心筋梗塞や脳梗塞などでバイアスピリンなど抗血液凝固剤を服用している場合は歯周組織を治癒させるために必要な血餅ができにくい場合があります。
歯牙への感染(歯根嚢胞や歯性上顎洞炎)などで顎の骨の状態が悪かったり、垂直的な骨量不足で下歯槽神経や上顎洞と近接している場合にはインプラント治療が困難になるケースもあります。これら場合、抜歯待時インプラントが選択されることが多いです。また困難な症例もインプラントガイドシステムにより事前にシュミレーションすることも可能です。リスクが高い場合にはインプラント治療を諦めることも大切です。また健康保険の適応ではないため自費診療となり治療費が高額になります。ご自身の口腔内のことなので“よく考えて”治療の決断を行って欲しいと思います。治療に納得するまで担当の歯科医師に質問してください!

Case 【抜歯待時インプラント / 下顎臼歯部】

抜歯待時インプラントのデメリットは抜歯をしてから時間を置きすぎると対合歯が挺出(噛み合う歯がなく伸びてくる)してしまうことです。抜歯待時の期間は平均して約3〜6ヶ月ですが、それ以上放置していると対合歯の挺出が進行し、上部構造(インプラントの人工歯の部分)の形態が悪くなったり、対合の健全な歯を削らなくてはいけなくなったりします。対合の歯の挺出を予防するために一時的に部分入れ歯やマウスピースを作製する場合もあります。

上記症例は28歳女性、重度の虫歯で抜歯をして5年程経過してしまったケースです。他院で抜歯時にもインプラントの説明をされ、2歯連続欠損となることから骨吸収の予測が難しく抜歯待時インプラントとなったそうです。しかしインプラント手術が怖く、気がついたら5年経過してしまったとのこと。上顎の歯が大きく挺出(出てきてしまっている)しています。まずは欠損部位に入れる歯のイメージをワックスで想定(ワックスアップ)して、それに合わせてインプラント埋入位置を想定したサージカルガイドを作製。CTで下歯槽神経との距離を確認後、欠損部位にインプラント手術と歯肉弁根尖側移動術(歯ぐきの免疫力を高めるために付着歯肉を獲得すること)を行い、対合歯は挺出した分の高さを合わせるために修復処置をさせていただきました。終わってみれば「思ってた程怖くなかった、久しぶりに右で噛んだ、早くやればよかった」とのお言葉をいただきました。
治療費用:インプラント+上部構造34万円 / 臼歯セラミック修復6〜8万円
治療期間:約5ヶ月


インプラント治療とかみ合わせの関係

インプラントと天然歯では構造上の差から咬合負担においても差があります。インプラントの咬合は非常に難解であり、適切な咬合を与えることが難しい場合が多いです。その理由のひとつとして歯根膜の有無であり、それにより咬合負担に差があります。歯根膜とは歯と骨の間にあるクッションの役割をしているもので、インプラントには歯根膜がありません。「高い感じはないけど、硬い感じがする」とおっしゃる患者様もいます。

インプラント治療を考える際は、その噛み合う歯(対合歯)にインレーやクラウンなどの補綴物が入っている場合や天然歯でも摩耗や咬耗が著しい場合は、補綴物の新調や形態の修復を考えましょう。すり減っていたり形態が悪いと、インプラントに入れる人工歯にも影響があり、それが原因で無理な咬合力がかかると将来的にインプラントや対合歯の破損につながる可能性もあります。上下顎の歯の修復によって理想的な咬合接触を与えやすく、インプラントや天然歯に適切な咬合力を与えやすいです。
歯ぎしりや食いしばりもインプラントにとっては脅威です。歯根膜がない分、予測できない咬合力には対応が難しいと言われています。術後はナイトガード(歯ぎしり予防のマウスピース)を装着して就寝時の歯ぎしりや食いしばりを予防しましょう。また噛み合う歯どうしで材質を合わせた方が歯にかかる摩擦が低減できます。当院では対合歯が天然歯で補綴物のない歯(治療していない歯)の場合、天然歯に硬さが近い材質を選択するようにしています。
NDCカンファレンスでインプラントの咬合について症例報告をさせていただきました

Case 【抜歯待時インプラント / 上顎前歯&下顎臼歯】

インプラントをする際には、天然歯の解剖学的形態と理想的な咬合接触を付与し、長期安定させることが重要と考えています。しかし多くの歯は対合歯や隣接歯の咬耗や摩耗などにより理想的な修復が困難となる場合が多いです。術後の見栄えは良くても、口腔内の問題が解決していないと再発のリスクが残ります。歯が抜けた原因が医原性疾患(歯科治療による疾患)にあるのか、もしくは病的咬合(かみ合わせ不良)にあるのかをしっかり診断して、現在の口腔内の状態が将来的にみてリスクが高いのか低いのか、そう言ったことを患者様一人一人に対して見極める必要があります。

上記症例は58歳女性、下顎臼歯部の入れ歯を装着しても違和感があり充分に使用できておらず、インプラントにしたいという希望で来院されました。口腔内の状態としては、顎関節運動が良好で、両側の犬歯に咬耗はあるものの咬合接触(噛み合っていること)があり側方運動時(左右に歯ぎしりするような動き)にもしっかりと機能していたため、この犬歯の動き(顎関節の動き)に合う大臼歯の形態と咬合負担を付与することにしました。

しばらくの間、大臼歯で噛んでいないため、インプラントをした後にプロビジョナルレストレーション(以下PVR=最終補綴をイメージした机上の学問に基づいた形態の仮歯)を装着して、大臼歯での咬合訓練とともに咬合接触点と機能性の評価を行いました。PVRを装着してから約8週間後、左下のPVRの遠心が大きく欠けています(写真中央右)。これは作製したPVRが患者様固有の口腔内の動きや口腔習癖に対応できなかったという証拠です。この評価と8週間のPVRのすり減りなどを参考に患者様の口腔内に合う最終補綴物を製作し装着しました。またこの患者様は臼歯部にPVRを装着後、上顎前歯のブリッジもインプラントに交換、下顎前歯をマウスピース矯正することで前歯部の咬合も改善し、口腔内の安定を目指しています。術後2年(写真は術後6ヶ月)今のところ経過は良好です。
治療費用:インプラント+上部構造34万円 / 前歯セラミック修復10万円 / 臼歯セラミック修復6〜8万円 / マウスピース部分矯正30万円
治療期間:約12ヶ月

Case 【抜歯即時インプラント / 上顎大臼歯】

抜歯即時インプラントとは、その名の通り「抜歯をしてすぐに(その日のうちに)インプラント手術をする」方法です。この方法のメリットは抜歯と同時にインプラント手術ができるため外科処置が一回で済むということ、また待時のように待時期間が少なく治療が早く終わることにあります。早く歯の機能が回復することで周囲の歯に迷惑をかける期間が少ない一方で、抜歯後の骨吸収を慎重に見極めなければなりません。骨縁下カリエス(骨の中まで虫歯が進行)や歯牙垂直破折(歯が縦に割れること)、骨量が充分に確保できる根尖性歯周炎(歯根に膿がたまる疾患)の抜歯に向いている方法です。

上記症例は55歳女性、過去の根管治療や補綴(差し歯)の形態が原因で上顎右側大臼歯に違和感と咬合痛が出ており、抜歯の判断となった症例です。上顎第一大臼歯の頬側近心根に炎症と病巣が残っており、第二大臼歯は歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目の溝)がかなりの深さでした。第二小臼歯の歯はインレーが入っているだけの生活歯(神経がある歯)の状態だったためインプラントを選択していただきました。

大臼歯部ということもあり早期での機能改善を図りたかったため、抜歯即時インプラントを選択。第二大臼歯は抜歯によって大幅な骨吸収が予測されたため今回はインプラントを断念。抜歯前は頬側の骨があるのに対して、抜歯即時インプラント後約8週間では頬側の骨は大きく吸収しています。上部構造の人工歯の形態を工夫して歯肉辺縁のラインを揃えました。また口腔内を安定した咬合にするため、他の歯の補綴物も新調して咬合理論(ABCコンタクトという安定咬合に必要な噛み合わせ)に基づいた上部構造製作を行いました。インプラントと天然歯には構造上の差があり咬合を考える上でも区別して考えています。
治療費用:インプラント+上部構造34万円 / 臼歯セラミック修復6〜8万円
治療期間:約5ヶ月


今すぐのインプラントは難しいという方に

歯を抜くことになったり歯が抜けてしまってる方に、インプラント治療を勧めると「インプラントにしたいけど今すぐは…」「せめてインプラントをする費用を貯める期間があれば…」と感じている方も多いと思います。そういう方にとって大切なことは、インプラントをする時期まで、現在の状態をできるだけキープすることです。

歯を抜いたまま放置していると、対合の歯が挺出したり、隣合う歯が傾いたりしてしまいます。そういった状況になるとインプラント治療が困難になったり、インプラント治療ができなくなる場合もあります。一時的に入れ歯を装着したり、ナイトガードやリテーナーを製作することで、残っている歯の動きを最小限に抑える努力が必要です。

またインプラント治療をするにあたり、口腔内のリスク低減のために、対合歯や隣接歯の修復治療、矯正治療や咬合再構成などが必要となる場合もあり、治療にどれくらいの費用がかかり、どれくらいの期間かかるのか、治療の優先順位はどうなのか、今できることはあるか、ということなどを、あらかじめ担当医に聞いておいて、担当医と一緒に将来の計画を立てることが重要です。

Case【矯正用リテーナーの活用

上記症例は24歳女性、下顎の左右臼歯部に欠損があるが、「銀歯は嫌だ」ということで来院されました。治療の方法はセラミックでのブリッジかインプラント治療、ノンクラスプ入れ歯、この3つの方法でしか銀歯以外の治療はできないと説明しました。欠損部の両隣の歯が虫歯がなく綺麗な歯であったためブリッジではなくインプラントか入れ歯がオススメであることを説明しましたが、経済的に今すぐのインプラント治療は難しいとのことでした。

全顎的に虫歯リスクや歯周病リスクは低いため、インプラントをする時期までの間、矯正用プラスチック保定装置(リテーナー / 矯正後に歯が動かないように予防するマウスピース)を応用して歯の動きを最小限に抑えることにしました。リテーナーに入れ歯用人工歯を接着して見た目にも向上しています。食事は不可ですが飲み物やゼリーくらいなら大丈夫です。普段の生活と就寝時に着用することで効果を発揮します。またインプラント埋入後の安静期間(骨と結合するための期間)の仮歯としても使えます。
詳しくはこちら
治療費用:リテーナー+人工歯 2万円(保証期間なし)
治療期間:約2週間


歯槽骨保存治療と歯槽骨再生治療の違い

残根埋入(ざんこんまいにゅう:歯根を歯茎の中に保存する方法)やルートメンブレンテクニック(歯根の一部を保存してインプラントを入れる方法)のように歯根や歯根膜を保存することで骨吸収を最小限に抑える方法の一方、人工骨によって新たな骨組織を再生する骨増生(GBRテクニック)という方法があります。

GBRは、英語でGuided Bone Regenerationとなり和訳すると骨再生誘導法となります。一般的には特殊な人工メンブレン(人工膜)を用いて人工骨移植を行い骨組織を再生するものとなります。人工骨には吸収性と非吸収性があり、吸収性でも骨に置換するのは約6ヶ月かかり完全な天然骨置換は困難と言われています。非吸収性では骨と置換することはなく天然骨と人工骨のハイブリッド様の骨様組織として残存します。

歯や歯根膜がないところに歯槽骨を再現することは至難であり、また骨様組織への感染源としての可能性を考慮して、当院では骨増生で歯槽骨を元に戻すことを考えるのではなく、インプラントを埋入するのに必要な最低限の骨増生(GBR)に留めています。

Case 【残根埋入テクニック / 天然歯ブリッジ】

残根埋入とは、「歯を抜くと周囲の骨が吸収してしまう」ということは「歯を抜かなければ吸収しない」という理論を利用した治療方法です。抜歯をしなくてはいけない歯であるが、根尖病巣や歯根破折が根尖まで進行してない症例に向いています。しかし歯を抜かないためにインプラント治療を選択することはできないため、自ずと抜去部の歯を補う補綴の選択はブリッジか入れ歯となります。抜歯部の周囲の歯が既に補綴(差し歯など)してある部位にはおすすめです。
上記症例は数年前に前歯をセラミック修復しており、そのうちのひとつが水平破折(歯が横に割れる)をおこして抜歯の判断となった症例です。左上切歯周囲の歯肉が腫れ、咬合痛を訴えて来院されました。補綴物(差し歯)除去後にレントゲンより歯牙破折は歯根中央付近まで進行しているが根尖病巣は特に認めず、周囲の歯は補綴してある状態でした。抜歯と判断された歯は歯槽骨吸収を最小限に抑えるため残根埋入、抜歯後の補綴はブリッジとすることにしました。残根埋入後約2ヶ月後の状態では、粘膜が綺麗に回復して、骨吸収もほとんど認めず、最終補綴物では残根埋入をしたポンティック部分も歯肉との自然な調和を獲得し、まるで歯が生えているような見た目にすることができました。
治療費用:前歯セラミック修復10万円×3本
治療期間:約3ヶ月

Case 【残根埋入テクニック / 前歯インプラントブリッジ】

歯を抜くと歯槽骨が吸収してしまいます。前歯部の場合、左右どちらか一方だけ歯を失った場合、口元の見え方が左右で差がついてしまいます。片方には歯と歯槽骨のリップサポート(口唇を支える歯周組織)があり、片方には歯槽骨によるリップサポートがなくなり、口元が歪んでしまう場合があります。特に失活歯(神経がない歯)は予後的に歯根破折など抜歯のリスクが高く管理が難しいところです。

上記症例は左上前歯の動揺を主訴に来院された65歳女性の患者様。左上犬歯は差し歯の中で虫歯が進行しており一部クラック(ひび割れ)があり抜歯の診断、左上切歯は水平的に破折を認めたため抜歯かエクストルージョン(矯正で歯牙を挺出)を説明したところ、抜歯をしてインプラント治療を希望されました。左上側切歯は保存できる状態でしたが失活歯ということもあり、年齢的にも健全な状態のうちに残根埋入して両サイドに抜歯即時インプラントをしてブリッジという治療を選択。

同時にHarmony with Lips(口元・口唇と前歯の審美調和)を目指して他前歯の審美治療もしました。垂直的な骨量が原因でインプラントがやや浅くなってしまったため歯肉の高さを合わせることが困難でしたが、患者様はローリップ(笑ってもあまり歯肉が見えない状態)であったため、審美的には特に問題はありませんでした。ご家族の方から「笑顔が前より綺麗になった」と言われるようになったと喜んでくれました。
治療費用:インプラント+上部構造34万円 / ブリッジポンティック10万円 / セラミック修復6〜8万円
治療期間:約6ヶ月

Case 【残根埋入テクニック / 臼歯インプラントブリッジ】

残根埋入とは、「歯を抜くと周囲の骨が吸収してしまう」ということは「歯を抜かなければ吸収しない」という理論を利用した治療方法です。では抜歯する歯が単独歯より連続した複数歯となるとさらに骨吸収は進行してしまいます。インプラントでブリッジをする際にブリッジの支台となるインプラントとインプラントの間に歯根を残すことで骨吸収を最小限に抑えることができます。また大臼歯が2本抜歯となった場合には最後方臼歯を残根埋入で保存してインプラントを行うことで骨吸収を1本分に抑えれます。
症例は65歳男性、左下臼歯部に入っていたブリッジの下で歯根破折が認められたため抜歯の判断となりました。左下第一小臼歯部と第一大臼歯部に抜歯即時インプラントを行い、第二小臼歯を残根埋入テクニックを施術して、本来なら3歯連続欠損の骨吸収を最小限に抑える治療を行いました。


骨吸収は最小限に抑えますが、抜歯する部位には骨吸収が起こるため骨の吸収量を予測して抜歯即時インプラントを行う必要があります。また安定した咬合を獲得するために、右上は歯冠部が破折していた第二大臼歯を残根埋入して、第一大臼歯部にソケットリフト(上顎洞粘膜挙上手術 / 垂直的な骨量不足により上顎洞にインプラントを入れるための骨増生)を併用してインプラント。矯正治療や咬合再構成もさせてもらい、最終補綴物にはE-maxセラミックのインプラントブリッジを装着して機能性を改善。「よく噛めるようになって太ってしまった」と笑いながらおっしゃってくれました。
治療費用:インプラント+上部構造34万円 / ブリッジポンティック10万円 / セラミック修復6〜8万円 / 矯正治療60万円
治療期間:約20ヶ月

Case 【ルートメンブレンインプラントテクニック】

ルートメンブレンテクニックとは、『ルート=歯根』『メンブレン=膜』いわゆる歯根膜を残して歯槽骨の吸収を抑えるインプラントテクニックのひとつで、ここ最近歯科業界でとても注目されています。抜歯となった歯の頬側の一部分を保存してインプラントを行うことで、残した歯の一部の歯根膜が保存され歯槽骨の吸収を抑制します。根尖に病巣があっても歯の一部を保存する部分に問題がなければ行える治療方法です。
上記症例は他院で左上第一小臼歯の骨縁下カリエス(歯茎や骨の中まで虫歯が進行)によって抜歯と診断されたケースで、患者様のかかりつけ歯科医院の歯科医師の先生がしてくれました。根尖には病巣もなく第二小臼歯が失活歯に補綴(差し歯)されており、4番目の第一小臼歯を残根埋入テクニックで③4⑤のブリッジも選択肢ですが犬歯(3番目)がカリエス(虫歯)もなく綺麗な歯であったためインプラントを選択されました。

インプラントを行うにあたり第二小臼歯が失活歯(神経がない歯は予後が予測できない場合が多い)であり、将来的にもしも2歯連続欠損となると歯槽骨の吸収が大きく進行してしまう可能性を考慮して、歯槽骨の吸収を最小限に抑えるためルートメンブレンテクニックを応用してインプラント手術を行いました。抜歯時に頬側の歯質の一部を保存することで頬側の歯槽骨吸収を抑制し、抜歯窩にドリリングを行い抜歯即時インプラントをしています。抜歯即時インプラント術後から約154日(約5ヶ月)後も歯槽骨の吸収を認めず、反対側と比較してもほとんど歯肉の形態の変化はありません。
治療期間:インプラント+上部構造34万円 / セラミック修復6〜8万円
治療期間:約6ヶ月


インプラントオーバーデンチャーとは?

顎骨に埋入したインプラントにアタッチメントを使って入れ歯を固定する方法です。入れ歯の違和感の原因は「ずれる」「動く」「外れる」という意見が多く、それにより「話しにくい」「噛みにくい」「歌いにくい」などの症状がある方が多いと思います。インプラントオーバーデンチャーではインプラントにロケーターというボタンのようなものを装着して入れ歯をしっかり固定するため、食事や会話でずれたり外れたりする心配がなくなります。また入れ歯では噛みにくかったものも噛めるようになったり、しっかり噛めることでスポーツやカラオケ、山登りなど趣味の範囲も広がる可能性があります。
インプラントオーバーデンチャーは上顎総義歯の場合4本・下顎総義歯の場合2本を目安に埋入しますので、インプラントフルブリッジ(無歯顎に対して約6本のインプラントで固定式ブリッジを行うこと)よりインプラントの本数が減らせてるため、体への負担軽減や経済的にも低減できます。なおインプラントは顎骨に埋入しているので、ロケーターの部分はブラッシングが必要ですが、入れ歯は取り外し式のためご自宅でのメインテナンスもお気軽に行えます。

Case 【インプラントオーバーデンチャー】

審美症例の場合、顔貌の審美を優先して考慮し、骨吸収量を見越してあえて抜歯を選択するケースもあります。例えば上顎前突の症例で上顎前歯が大きく前に出てしまって、上口唇が張りすぎてしまっているような症例です。このような場合、歯冠部分だけを中に入れても歯の生え際の部分が残ってしまい、顔貌の審美向上にはつながりません。あえて抜歯をすることで骨吸収を起こさせて、口唇の審美的形態と調和を図る場合があります。
上記症例は上顎の入れ歯を「見た目が綺麗なもの」にしてほしいとのことで来院された女性です。術前の入れ歯を装着した際の口唇の様子を見てみると、口唇が前に張り出し、鼻唇角がきつく、上唇付近の見た目に違和感があります。その原因は1本だけ残った犬歯を基準に人工歯の配列をしていることと、下顎の前歯に叢生(歯並びが悪いこと)があり下顎犬歯の位置的に上顎前歯の配列が制限されています。

上顎前歯を後方に配列するために、残存していた左上犬歯を抜歯して骨吸収を待った後、抜歯待時インプラントを選択。さらに下顎前歯を矯正治療で叢生をなくし、上顎前歯の審美的な歯の配列位置を獲得しました。上部構造はロケーター(入れ歯をインプラントで留めるボタンのようなもの)と金属床義歯を装着。上顎の入れ歯がすり減りにくいようにと、入れ歯の犬歯と第一大臼歯を下顎と同じ種類のセラミック(E-max)の人工歯にする工夫をしました。

以前より山登りが趣味で山頂での昼食では食べれないものもあり悔しい思いを何度もしたという患者様。一番嬉しかったのは「BBQで焼いたトウモロコシの丸かじりができたこと」だそうです。「見た目も若返って、なんでも噛めて嬉しい」ととても喜んでくれました。
治療費用:インプラント24万円 / ロケーター6万円 / 金属床義歯25万円 / 矯正治療(片顎)35万円 / セラミック修復6〜8万円
治療期間:18ヶ月


インプラントは一生ものか?

「インプラントは一生ものか?」という質問をよく耳にします。“一生”というと“死ぬまで”ということになります。この質問の答えには「インプラントをする年齢」と「いつまで生きるか」ということが大きく関わっています。現在日本人の平均寿命は男性が81歳・女性は86歳(健康寿命は男性72歳・女性74歳)となっています。例えば、70歳でインプラントをした場合は平均寿命や健康寿命から考えて一生ものとなる可能性が高いですが、20歳でインプラントをした人は60年以上耐久しなければ一生ものとなる可能性は(高齢者へのインプラント治療より)低くなります。歯が抜けた原因をしっかり把握して、原因解決や咬合安定を図ればよりインプラントは長持ちすると言えます。お顔やお身体と同じように、口腔内も10〜20年以上経過するとどんな変化が起きるかと予測がつきません。インプラントフィクスチャー(人工歯根のネジの部分)は耐久していても、上部構造の人工歯が歯肉や歯槽骨などの歯周組織の加齢に調和できなくなり、上部構造の交換が必要となるケースもあります。また歯科医療業界はこの10年20年で大きく進歩し、現在も新しい治療方法や理論などがどんどん出てきています。インプラント治療もそのひとつです。僕らが大学生の時の教科書にはインプラント治療はほとんど載っていませんでしたが、今は大学の実習でインプラント埋入実習が行われ、国家試験にも出題されるようになりました。今後10年20年50年でさらに進歩してもっといい治療や材料が開発されると思います。その時その時で最新の治療が受けられるよう準備をしておくことが大切です。(あくまで個人的な見解です)


 

「写真で見るインプラント治療」は継続して更新していきます。更新の際にはブログでお知らせいたします。

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